楽しかった幼少期のリトミックのことを思い出すと、必ず床の節穴のこともセットで思い出します。
恐らく芸大の講堂か何かの建物だったと思うのですが、とにかく古くて、床のあちこちに節穴があいていたのです。
それらの節穴は、なぜか子供たちの興味を惹きつける不思議な力があり、いけないとわかっていても、その穴に何か入れてみたくなるのです。
リトミックのリズム打ちに使うリズムスティックは、菜箸くらいのサイズで2本組、先端は赤いゴムのキャップが付いていて、ちょうど巨大なマッチ棒のような姿です。
これがまた、節穴に縦に落とすのにちょうどいいサイズなのです。
親に買ってもらった大事なリズムスティック。
ダメだと分かっていても、スティックが節穴に吸い寄せられるように、なぜかポトッと落としてしまうのです。
穴の中へ消えてしまったら最後、床下に落下したそれを拾うことはおろか、暗い穴の中をのぞいても見えず、ここでようやく取り返しがつかないことをしたんだなぁということを、子供たちは身をもって知るのでした。
そして同伴していた親に怒られる、という場面を私は何度も目撃しました。
私は真ん中っ子で、わりと周りの状況を観察している子だったからかもしれませんが、自分のスティックを落とすことはありませんでした。
でも、魅力的なものに惹かれてしまう気持ちに密かに共感し、心のままに行動できるお友達をどこか羨ましく見ていたと思います。
リトミックの勉強を始めて4年目にして初めて、認定課題の論文を書くにあたり、創始者であるジャック・ダルクローズの著書や関連書物を読み、その奥深さや人柄に感銘を受けました。
自分がまだまだリトミックというもののほんの一部分だけしか見えていなかったことに気付くと同時に、もっと知りたいと強く思うようになりました。
この先にどんな発見や驚きがあるのか見てみたい。
リトミックという魅力的な穴に、こんどは自分がスティックとなって、躊躇せずに飛び込んでみようと決めました。
先日の認定試験に無事合格することができ、来年度から一年、養成校で勉強することになりました。
勉強して自分の身体や演奏がどう変わるか、大変興味があります。
そして、春からそれぞれ新しい学年になる生徒さんたちに、どうアウトプットしていけるか、とても楽しみです。